【特集】
序説 ●加藤 博基
頸部・顔面の救急疾患は放射線科診断医が日常的に遭遇する病態であるが,細分化された頸部の各部位に多種多様な疾患が存在し,病変の広がりや重症度によって治療方針や予後が大きく異なるため,正確な画像診断が要求される.間隙や筋膜に代表される頸部の複雑な解剖を理解することは容易でないため,頸部の画像診断を苦手とする先生が多いと思われるが,頸部・顔面の救急疾患を読影する際には,病変の局在や広がりを適切な解剖名を用いて表現することが望ましい.
頸部・顔面の救急疾患は外傷性・非外傷性の疾患に大別される.外傷性疾患は鈍的外傷と鋭的外傷(穿通性外傷)に分類され,日本では鈍的外傷が圧倒的に多く,複雑な顔面骨骨折では機能的および整容的な治療が必要になる.一方,非外傷性の救急疾患は感染,炎症,血管(出血),腫瘍が原因となり,頸部では感染性疾患が最多である.これらの救急疾患の中には緊急の外科的介入が必要な疾患が含まれており,適切な治療の時期を逸すると致死的または予後不良となるため,放射線科診断医には治療方針にまで言及した画像診断が要求されることもある.
この特集では頸部を7つの部位に分類し,各部位に生じる代表的な救急疾患を幅広くカバーしていただいた.発症頻度が低くても,画像診断の位置づけが重要な疾患や見逃しが許されない疾患は,積極的に取り上げていただいた.部位ごとに外傷性疾患と非外傷性疾患の割合は異なるが,外傷性疾患と非外傷性疾患の大項目に分類してあり,読影時に容易に参照できるため,この特集号を読影室に常備してお役立ていただきたい.
執筆は頭頸部画像診断を専門とされている経験豊富な先生方にお願いした.自治医科大学の藤井裕之先生には,外傷性疾患として側頭骨骨折,非外傷性疾患として中耳炎とその合併症を中心に側頭骨・頭蓋底疾患を解説していただいた.帝京大学の豊田圭子先生には,眼窩の外傷・炎症性疾患,鼻副鼻腔炎の合併症を中心に眼窩・鼻副鼻腔疾患を解説していただいた.北里大学の浮洲龍太郎先生には,複雑な顔面骨骨折をイラストを用いて視覚的にわかりやすく解説していただいた.東京歯科大学市川総合病院の馬場亮先生には,外傷性疾患として穿通性咽頭損傷,非外傷性疾患として感染性疾患を中心に上咽頭・中咽頭・口腔疾患を解説していただいた.岐阜大学の川口真矢先生には,下咽頭・喉頭疾患を気道閉塞のリスクと関連して解説していただき,小児救急疾患にも触れていただいた.近畿大学の柏木伸夫先生には,唾液腺・甲状腺の非外傷性疾患を中心に解説していただいた.埼玉医科大学国際医療センターの
小澤瑞生先生には,血管の外傷性疾患,リンパ節炎を中心に血管・リンパ節疾患を解説していただいた.
救急疾患の特集なので,それぞれの疾患が緊急性が高い疾患かどうかを強調し,緊急性が高い疾患は読者に緊迫感が伝わるように工夫していただいた.疾患を解説する際には,画像所見に加えて臨床症状や治療法にまで言及していただいたので,頭頸部を専門とする放射線科診断医にとっても読み応えのある特集になった.最後に執筆を快諾していただいた先生方に深謝し,この特集が明日からの診療に役立つことを祈念する.
序説 ● 加藤 博基
側頭骨,頭蓋底 ● 藤井 裕之,藤田 晃史ほか
眼窩,副鼻腔 ● 豊田 圭子,住田 薫ほか
顔面骨(顔面骨骨折) ● 浮洲 龍太郎
上咽頭,中咽頭,口腔 ● 馬場 亮,山内 英臣ほか
下咽頭,喉頭,小児 ● 川口 真矢,加藤 博基ほか
唾液腺,甲状腺 ● 柏木 伸夫,藤原 良平ほか
血管,リンパ節 ● 小澤 瑞生,齋藤 尚子
【連載】
すとらびすむす
雑感:SUB-FOUR making a thought to Paris ● 遠藤 正浩
画像診断と病理
仙骨軟骨肉腫 ● 武内 泰造,前部屋 祐子ほか
ここが知りたい!
画像診断2018年2月号特集
「大血管CTの必須知識─治療に直結する最新の情報も含めて─」
● 太田 靖利,大内 厚太郎ほか
CASE OF THE MONTH
Case of July ● 神谷 正喜,小林 大河ほか
The Key to Case of May ● 黒岩 大地,伊藤 浩
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
血管の画像診断 ● 岡田 宗正
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
脳神経編 ● 齋藤 麻美,花城 里依ほか
Refresher Course
細菌性肺炎の画像診断─成人の細菌性肺炎─ ● 岡田 文人,椋本 英光ほか