MRI基礎再訪
シーケンスの特徴を生かした臨床応用のために
序説
似鳥 俊明
核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance;NMR)現象は,1946年,ハーバード大学のE.M.Purcellとスタンフォード大学のF.Blochにより発見されたが,MRIは1973年のP.Lauterburの傾斜磁場によるNMRのimaging化に始まる.NMR imaging法は,均一な静磁場と線形磁場勾配を使用して,2次元の核スピン分布を求めることから出発し,当時はズーマトグラフィ(zeugmatography)と称された.残念ながら現在このことを語る人は少ないが,zeug(ma)はギリシャ語で結合,対という意味を持っており,農作業の時に2頭の牛をつなぐ“軛(くびき)”を指す.azygosは不対性の(静脈)という意味.zygomatic bone(頬骨)の語源に思いをはせることもできる.ともあれ,zeugmatographyとは,MRI撮像原理の重要な部分を思い起こさせる,なんともチャーミングなネーミングであった.
毎日の多忙な読影業務の中で忘れかけている,我々だけが持つ特権を思い出してみよう.MRIという,考えてみれば何とも不思議な医療装置の成り立ちを見直してみることで,少し見方が変わるはず.時には先人の,あるいは同時代の技術者たちのワザの妙味に感心してみよう.さまざまなパルスシーケンスの特徴を総ざらいし,その有意義な使用法を体系的に考えてみよう.明日の診療では,定められたプロトコールだけでなく,シーケンスの特徴を生かした使い方をしてみよう.画像診断に携わる者だけが味わうことができる愉しみである.さらには,何度も挑戦してははじかれた難解なMRI原理を,成書とは違った角度,ボリュームで書かれた論文をじっくり読んでみよう.
本特集は,MRIの基礎にもう一度立ち返って,画像の成り立ちを解説し,代表的シーケンスの構造と特徴を改めて学び直し,効果的な臨床応用のポイント解説を目指したものである.MRIに携わるすべての職種の,初学者から熟練者までが,本書を通じてMRIの愉しみを再確認してくれることを信ずる.
特集
効果的に使いたいシーケンスとその臨床応用
A. 頭部
B. 骨関節
C. 心血管
D. 腹部
E. 女性生殖器
F. 領域を越えた視点から
MR画像の成り立ち
基本的な撮像シーケンス
臨床で必要なS/Nの知識
●連載目次●
すとらびすむす
サッカー,フットボール,蹴球
関谷 透
画像診断と病理
肝未分化肉腫
中川 基生,原 眞咲ほか
ここが知りたい!
画像診断2010年1月号特集
「Cardiovascular Imaging 2010-新しい循環器画像診断と読影のための基礎知識-」
上田 達夫,岡田 宗正ほか
胸部画像診断24のポイント
分布から読み取るもの
野間 恵之
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
神経放射線
菅 信一
CASE OF THE MONTH
Case of June
古谷 かおり,原田 雅史ほか
The Key to Case of April
北村 弘樹
Refresher Course
外傷性眼窩疾患の画像診断
外山 芳弘