“転移”の画像診断
序説ーよくあるけれど奥深いー
大友 邦
転移の検出や評価が,悪性腫瘍症例に対して施行される画像検査の主目的の1つであることは今さら言うまでもありません.そもそも悪性腫瘍の病期分類の指標として最も一般的なTNM分類の3要素のうちの2つは転移に関するものです.一方,画像診断の側から見た場合,画像所見のスペクトラムが広いことが転移の特徴でもあります.有名かつ稀な疾患の典型例より,よくある疾患の非典型例に遭遇する頻度が高いことを考え合わせると,腫瘤性病変の画像診断に際して,既知の原発巣の有無にかかわらず,単純嚢胞や良性腫瘍の典型例などを除くと,とりあえず転移の可能性を想起する必要があります.
今回は日常遭遇する頻度が高いがゆえに,ともすると“通り一遍”に扱われがちな転移の画像診断の重要性と奥深さを見直すことをねらいとして本特集を企画しました.具体的には領域・臓器ごとの転移について,的確に検出・鑑別するために必要な基本的知識を中心に,原発巣の推定に役立つ画像所見,治療方針決定のポイント,さらに転移の画像診断のピットフォールを含めて,解説していただきました.さらに東京女子医科大学薬理学教室の丸義朗先生に,“転移の分子生物学的メカニズム”について,門外漢である我々放射線診断医にもわかるように平易に解説していただきました.癌に前癌状態があるように,原発巣だけではなく全身的な“前転移状態”とも言うべき病態があることを知りました.
かつて,悪性腫瘍を発病された方々にとって,“転移あり”との診断は死の宣告に等しいものだったように思われます.しかし,放射線をはじめとするピンポイントの局所療法や選択性の高い化学療法の進歩で,転移が絶望と同義であった時代は確実に過去のものになりつつあります.本特集が,転移の画像診断の大切さと多様性を読者の皆様が再認識する一助となり,ひいては転移性腫瘍のマネージメントの向上にわずかなりとも貢献できればこれに過ぎる喜びはありません.
特集
転移の分子機構
頭部,頸部
肺,縦隔
肝,胆,膵
消化管,腹腔
腎,副腎
卵巣
骨
●連載目次●
すとらびすむす
入局動機とがん医療
足立 秀治
画像診断と病理
脾原発悪性リンパ腫
荒川 利直,原 眞咲ほか
ここが知りたい!
画像診断2009年9月号特集
「知っておきたい虚血性脳血管障害の知識ー基本から最新の知識までー」
松末 英司,原田 雅史ほか
胸部画像診断24のポイント
困った時のlymphoma
野間 恵之
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
胸部のdual-energy CT
小野 修一
CASE OF THE MONTH
Case of February
森田 奈緒美,高尾 正一郎ほか
The Key to Case of December
長谷川 進一
Refresher Course
子宮内膜症のMRI診断Up-to-Date
竹内 麻由美,松崎 健司