STOP!メディケーションエラー ふるかわ先生の計算脳トレーニング
インスリン製剤では「単位」, インターフェロン製剤の製剤ラベルでは「国際単位」, プロスタグランディンE1製剤では「µg(マイクログラム)」という単位の表示がみられます. これらは,生体成分由来の物質で多く使用されている単位です.
 インスリンは1921年に発見され,医薬品として製造が開始されましたが,インスリンの力価はロットごとや製造会社ごとにバラツキがありました. そこで,1924年にインスリン標準品を調製する動きがあり,1925年に8単位=1mgと定義されることになりました. これが最初のインスリン国際標準品です.
 その後,インスリン製造技術が急速に進歩し,1958年には24単位=1mgとなり,精製技術がより進歩したことにより,1987年にはヒトインスリン26単位=1mg(1mg=26単位)と定義されました. しかしながら,世界的に,インスリンの成分表示は,「単位(Unit)」という単位が使用されています.
 「単位」という表示は生物由来成分の医薬品に多く用いられており,他には,血液凝固作用を持つ「ヘパリン」製剤は,インスリンと同じ「単位」という単位,また,抗ウィルス作用をもつインターフェロンや成長ホルモン製剤では,「国際単位(IU:International Unit)」という単位が使用されています.
写真1
インスリン製剤
(ノボリンN注100:ノボノルディスクファーマ)
写真2
インターフェロン アルファ製剤
(スミフェロン300:大日本住友)
※一部のインターフェロンは,成分量をµgで表示している
1mL=何単位?
ノボリンN注100は, 10mL入りのバイアルに1,000単位,つまり1mL当たり100単位のインスリンが含まれています. 計算の基本は,1mLの中に含まれている薬効成分の量(ノボリンN100の場合は100単位)を知ることです.
古川先生 インスリン製剤に関するミニ知識
 ・インスリンの「○単位」という単位の意味は?
 一部の医薬品の製剤ラベルには「µg」(マイクログラム:microgram)や「ng」(ナノグラム:nanogram)という単位が使用されています. この「µg」と「ng」は手書きの場合,読み違えることもあるので,必ず確認してください. また,「mg」(ミリグラム:milligram)に比べると使用される機会が少ないので,「mg」と混同する危険性があります.
µg(マイクログラム microgram)とは?
「µg」は「mg」の1000分の1で,ガンマ(γ)と同じです.
ng(ナノグラム nanogram)とは?
プロスタグランディンE1製剤(パルクス注)の添付文書の用法用量には「ng」と書かれています. 「nano」は「micro」の1,000分の1,「milli」の100万分の1. つまり「ng」=10億分の1gであり,非常に微量です. こんな少ない量で作用するのですから,パルクス注の有効成分であるアルプロスタジルは,いかに作用が強い物質かということがわかります.
写真3
プロスタグランディンE1製剤
(パルクス注:大正富山医薬品)
 医薬品の投与量は,患者の体重や体表面積に比例しているため,添付文書の用法用量には, 「mg/kg(重量/体重)」や「mg/m²あるいはµg/m²(重量/面積)」, 「ng/kg/min(重量/体重/時間)」などの単位が使われています.
 多くの医薬品,特に小児用では,添付文書の『用法用量』に,体重1kg当たりの量(mg/kgやµg/ kg)が表されています. 薬理作用を表すために必要な投与量が,患者の体重と比例関係にあるからです.
 たとえば,気管支喘息の治療に用いる「アミノフィリン(ネオフィリン注250:エーザイ)」では, 「小児には1回3~4mg/kgを静脈内注射する. 投与間隔は8時間以上とし,最高用量は1日12mg/kgを限度とする. 必要に応じて点滴静脈内注射する」と記載されています.
 体重1kg当たりの量(mg/kgやµg/kg)で表されている場合は, 患者の体重を乗じて投与量を算出します.
 抗がん剤など一部の医薬品では,投与量を体表面積当たりで表すことがあります. 体表面積は体重と身長から計算されるため,体重のみより薬理作用との関係をより正確に表すと考えられます.
 たとえば,がん化学療法による好中球減少に対して投与されるフィルグラスチム(グラン注:キリンファーマ)の用法用量は, 「通常,がん化学療法剤投与終了後(翌日以降)で骨髄中の芽球が十分減少し末梢血液中に芽球が認められない時点から, フィルグラスチム(遺伝子組換え)200µg/m²を1日1回静脈内投与(点滴静注を含む)する. 出血傾向等の問題がない場合はフィルグラスチム(遺伝子組換え)100µg/m²を1日1回皮下投与する」と, 体表面積当たりの量で表わされています.
簡単ではありませんが,体表面積は次の式で計算できます.
体表面積(m²)=体重(kg)0.425×身長(㎝)0.725×0.007184
※体重と身長の数値を入力するだけで計算してくれるサイトもあります.
http://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/Hyomenseki.htm
 一部の医薬品では,投与量を「mg/kg/min」のように,<1>時間当たりと<2>体重当たりの2つで表しているものもあります. つまり,医薬品成分の重さを示す「mg」,体重を示す「kg」,そして,時間を示す「min」という3つの単位の組み合わせです. まず,「mg/kg」という単位は,体重1kg当たりの医薬品成分の重量(mg)を表しています. 実際の投与量は,患者の体重(kg)を乗じることによって算出できます. これに「時間 min」が付くと,時間当たり, つまり1分当たりの投与量(mg/kg)を表します.
 たとえば,パルクス注(プロスタグランディンE1製剤)を「動脈管依存性先天性心疾患における動脈管の開存」のために投与する場合, その投与量は,「輸液に混和し,開始時アルプロスタジル5ng/kg/minとして持続静注し,その後は症状に応じて適宜増減して有効最小量とする」と書かれています.
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